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文学の死後、SNSを受け入れるまで 短文学13

第1章「既読5、いいね0」

「文学はもう古い」ってポストしたら、既読が5。

いいねは、0。

多分、そのうちの一人はお前だろう。

返事がない。返事がないのが返事ってやつか。

タイムラインの流れは速い。

ページをめくるよりも速い。

俺の言葉は、波に飲まれた空き缶みたいに、すぐ沈む。

もう見えない。

引き波が戻るころには、別の空き缶が漂ってくる。

何もかも、そうやって置き換わっていく。

「古い」という感覚は、どこから来るんだろうな。

俺が生まれる前から古かったのか。

それとも、俺の中でだけ古くなったのか。

文学ってやつは、なんか、黒いフェルトの帽子の匂いがする。

麦わらじゃない。

雨の日にかぶって、濡れて、そのまま押し入れにしまわれて、忘れられた匂いだ。

通知が光った。

心臓が一瞬だけ強く打つ。

けど、開いたら別の投稿への反応だった。

俺は俺の文章に反応してほしい。

でも、それを求めてる自分がダサい。

誰かの「今からカレー作る」みたいなやつには反応できるのに。

なぜだ。

スマホの画面を指でなぞる。

指紋がガラスに滲む。

タイムラインは笑っている。泣いている。怒っている。

全員が同時に、別々の理由で感情を吐き出している。

それを俺は、ただ流して眺めるだけ。

溺れそうになる。

でも、泳ぎたくはならない。

「文学は古い」ってのは、たぶん俺の負け惜しみだ。

俺は本なんてもう読まない。

最後に読んだのはいつだったか。

駅の売店で買った文庫。カバーは黄色くて、背表紙の角が丸かった。

読んだ内容は覚えていない。

でも、まだその本は机の引き出しにある。

引き出しを開けていないだけだ。

投稿を消そうかと思った。

けど、それすらも面倒くさい。

この「既読5、いいね0」の状態が俺の今なんだ。

俺は俺の無視され方を、証拠として残しておく。

それは、なんか、負けた試合のスコアを額縁に飾るみたいなもんだ。

ポストの下に、関連投稿が並ぶ。

「文学の未来はSNSにある」って言ってるやつもいる。

その下には「SNSは人間をバカにする」って言ってるやつもいる。

その二つは、多分、同じタイムラインに流れてる。

相容れないくせに、並んで存在できる。

これが今だ。

これがポストモダンってやつかもしれない。

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