最近受容した何かについて書き込むスレ

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最近受容した何かについて書き込むスレ

スレID #121 / 速度 1765777870 km/h

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投稿一覧(速度順)

#430 / 速度 1765777870 km/h / 生存力 415724
つげ義春旅日記 旺文社文庫 巻末の正津勉対談を目当てに。つげ義春が川崎長太郎に言及している箇所あり。 当時マイナーだった宿場や湯治場をめぐる旅日記、夢日記、漫画、随筆のごった煮。 中学生だったつげ義春が絶望のあまりアメリカ行きの大型船に潜入成功したものの日本近海の時点で見つかってしまい密航失敗した随筆がおもしろかった。Wikipediaでは一行触れているだけの逸話。吉田松陰か!
#258 / 速度 1764669490 km/h / 生存力 1524104
有吉佐和子『恍惚の人』新潮文庫 現在の〈認知症〉、その昔の呼び方である「痴呆症」や「ぼけ」を扱った長編小説。 昭和の〈痴呆老人〉を描いているとなれば、専業主婦の介護地獄といったものを安易に連想しがちだが、本作の主要人物の一人である立花昭子は、弁護士事務所で和文タイピングをフルタイムでこなす〈共働き〉の職業婦人である。 昭子は共働きであると同時に〈一児の母〉であり〈昭和期の主婦〉であるため、夫による家事分担など存在せず、家族のため食事の用意を一手に引き受けているわけだが、作品冒頭では〈冷凍食品〉や〈洗濯乾燥機〉を大いに活用しているさまが描かれている。当時の物価高にも言及しており、生の魚よりも冷凍の魚のほうが安くて味が良い、というくだりさえある。 昭子が介護することになる相手は夫の父(舅/茂造)である。むしろ姑(春代)は生前思いやりがあって昭子に寄り添ってくれた良い思い出ばかりで、舅のほうが嫁である昭子をいじめ抜いてきた恨みがある、という設定だ。 1972年から2025年という時を経て読んだとき〈古くて新しい〉と感じる人は少なくないだろう。 物語は、狭い土地のうえに母屋と離れが建つ二世帯同居の庶民・立花家で、昭子の姑・春代が突然死するという出来事から始まる。 姑・春代が亡くなったことに気づくのが数時間遅れたのは、すでに舅・茂造の痴呆が進行していたがゆえのことだった。 『恍惚の人』作中において、〈ぼけ〉に関する描写はフルコースで供される。我が子のことさえ認識できない、幼児退行、食事したことを忘れて騒ぎ立て、その結果食べ過ぎる、徘徊(近所/遠方)、寝小便、果ては弄便まで。病気の呼称をどれだけ耳障り良くしたところで症状が緩和されるわけではない。症状に古いも新しいもないため、いまだ認知症に対する特効薬が現れそうもない2025年以降に読んでも、身につまされる人が多いのではないか。絶版を免れている所以である。 有吉佐和子『恍惚の人』は1972年に新潮社から〈純文学書き下ろし特別作品〉(函入り四六判)として出版された。つまりは筒井康隆『虚航船団』(1984年)と同じレーベルであることに少し驚かされた。 筆者(と突然現れて恐縮だが)が生まれて初めて自発的に手に取ったいわゆる「純文学」は、同レーベルの安部公房『砂の女』(1962年)であるから、つくづく新潮社とは書物縁が深い。 ・純文学書下ろし特別作品(新潮社) - jun-jun1965の日記 https://jun-jun1965.hatenablog.com/entry/2021/04/30/110016 ※レーベル刊行作品の一覧 もちろん作品の存在は知っていたし、おそらくテレビドラマ版も観たことがあるように思うが、齢45にして原作小説にようやく目を通す機会を得た。 噂によれば、〈新潮社別館ビル〉というのが大ベストセラーになった『恍惚の人』の莫大な利益にちなんで〈恍惚ビル〉と呼ばれているとか。 ところで。このいまだ売れ続けているベストセラー小説に対して「純文学か?」と問われたとき、即座に返答しかねる。口ごもらざるを得ない。松尾芭蕉の句が少し出てきたりするが、さして小難しいことは書いていない。はっきりといえば〈通俗小説〉である(と、小谷野敦氏のようなことを言ってみる)。 とはいえ、男性作家なら松本清張を、女性作家ならば有吉佐和子を目標とすべきである。その職業作家としての品格と確かな販売実績は、永遠のロールモデルといえる。小説創作を嗜む者としての個人的所感。

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