#661
/ 速度 1766143758 km/h
/ 生存力 42273
改行50回までにおさえるなら1000字が限界
#660
/ 速度 1766143709 km/h
/ 生存力 42322
------プロンプト ChatGPT5.2 Extende thinking-----
段落数は25以下。幼馴染が朝起こしにくる小説を1000字以内で書いて。独断と偏見の文体。オープンエンド。なお主人公に幼馴染はいません。ホラーっぽく。
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朝の目覚ましなんて、文明の敗北だと思う。静かに死なせてくれればいいのに、音だけはやたら元気だ。
ピンポーン。次に、指の骨で叩くみたいなノック。規則正しく三回。いや、正しすぎる。人間のリズムじゃない。
「起きて。遅刻するよ」
女の声。やけに近い。ドアの向こうというより、耳の内側で鳴る感じ。嫌な優しさだ。朝に優しいやつは信用できない。
「誰だよ」って言いながら、僕はもう知ってるふりをする。人間はそういう見栄で生きてる。
「私だよ。…忘れたの?」
幼馴染、って単語が頭に浮かんだ。嫌な反射だ。僕には幼馴染なんていない。小学校も中学も、群れから外れてた。美談にする気はない。事実だ。
覗き穴を見た。廊下は空っぽ。なのに、ドアの取っ手の影が、外から触られているみたいに揺れた。
「ねえ、開けて。寒い」
寒いのはこっちだ。部屋の中なのに、息が白い。カーテンの隙間から射す朝日が、氷みたいな色をしてる。
スマホが震えた。通知。「おはよ 起きて」。差出人は“ミオ”。登録した覚えはない。なのにアイコンは、古い集合写真の切れ端みたいに、僕の隣に女の子が写っている。
その顔が、今ドアの外で笑っている、気がした。覗き穴は黒いままなのに。
「ほら、鍵、開けて。昔みたいに」
昔なんてない。ないはずだ。僕の人生は、朝の目覚ましみたいに単調で、誰かに起こされるほど価値はない。
ガチャ、と鍵が少しだけ回った。僕は触っていない。チェーンも、勝手に震えた。
「やっと会えるね」
ドアの隙間から、冷たい指が一本、するりと差し込まれた。指先に、僕の名前の形をした爪があった。
……目覚ましが止まった。代わりに、僕の口が勝手に言う。
「おはよう、ミオ」
僕は誰に向かって、そう言ったんだろう。
#634
/ 速度 1766136021 km/h
/ 生存力 50010
-- プロンプト --
幼馴染が朝起こしにきて、玄関を出るまでの小説を2000字以内で書いて。改行は25回以下。独断と偏見の文体。オープンエンド。
----→改行が多いので行を詰める。
朝というのはだいたい不公平だ。眠っていた者にだけ、容赦なく“今日”を突きつける。しかも月曜とかいう、人類が勝手に決めた呪いの日ならなおさらだ。俺がその呪いに潰されかけているところへ、玄関のチャイムが鳴った。鳴らし方に人格が出る。短く二回。息継ぎみたいな間。
「起きてるー? 起きてないよね、知ってる」
声が聞こえた時点で、負けが確定する。幼馴染という生き物は、鍵穴より先に心の隙間に侵入してくる。次にガチャガチャと鍵の音。俺の家の合鍵を持ってる時点で、現代のセキュリティ神話は死んでいる。ドアが開いて、白い息みたいな冷たい空気と一緒に彼女が入ってきた。髪がまだ少し濡れている。朝の洗面台の匂いを連れてくる人間は信用ならない。こっちは布団と一体化しているというのに。
「ほら、起きろ。今日は大事な日」「毎日そう言うよな。大事じゃない日があるなら紹介してくれ」「屁理屈は起きてから。布団、剥がすよ」「やめろ。人権侵害だ」「寝てるやつの人権は軽い。判例がある」
彼女は平気で嘘を言う。たぶん本人は“勢い”を真実だと思っている。俺はそういう種類の暴力に弱い。剥がされた布団の下で、俺の体温が急速に価値を失っていく。
「で、なんで来た」「起こしに来た」「それは見ればわかる。なんで、毎回、そこまで」
「言ったでしょ。今日は大事な日」「……だから、その根拠」
彼女は俺の枕元に座って、スマホを取り出した。画面をこちらに向ける。眩しい。現代は光で人を支配する。
「ほら。九時集合。遅刻禁止」
俺は目を細めた。カレンダーに“九時集合”とだけ書かれている。場所の記載はない。人は情報が少ないほど、勝手に恐怖を補完する。
「どこだよ」「言ったら逃げるでしょ」「行く理由がない」「あるよ。昨日、あなたが自分で作った」「昨日?」
俺の記憶の棚には“昨日”がない。あるのは夜更かしと、適当な動画と、途中でやめた思考だけだ。彼女は、軽くため息をついて言った。
「あなた、夜中に“契約”した」「契約?」「そう。私と。ここにサインして」
彼女は鞄から紙を出して、俺の顔の前に突きつけた。A4一枚。やけに整った文章。俺の名前が書いてある。筆跡は……俺のものに似ている。似ているだけで、完全に一致ではない。
「なにこれ」「“外へ出るための契約書”。朝九時、玄関を出る。拒否権なし。違反した場合、罰則として——」「読むな」「読むよ。罰則として、あなたの“言い訳”を全部私が代筆する」「最悪じゃん」「最悪に見える? でも、あなたの言い訳、いつも同じだよ。季節と気分と世界のせい。コピペ」
胸が痛い。正確に言うと、胸のあたりが面倒くさい。図星の痛みはいつも鈍い。鋭い痛みは、もっと立派な人間にしか与えられない。
「……そんなの、俺が書くわけない」「書いたよ。あなたの部屋のプリンタ、紙詰まりしてた」
「プリンタなんて使ってない」「使ったんだよ、昨日。夜中の二時に。目が死んでる顔で」
彼女は淡々と言う。淡々とした言葉は、否定する隙を奪う。俺は契約書を奪って、目を走らせた。文章が妙に“俺っぽい”。嫌になるほど俺っぽい。卑屈で、理屈っぽくて、最後に小さな希望が紛れている。吐き気がする。そういう希望は、いつも裏切るからだ。
「これ、本当に俺が……」「うん。あなたね、言ったの。“起きるのが怖いなら、起こされればいい”って」
「そんな名言みたいに言うな」「名言じゃないよ。救急マニュアルみたいだった」
彼女は笑わなかった。だから怖い。笑いでごまかさない人間は、たいてい本気だ。
俺は起き上がった。床は冷たい。世界はいつだって俺の体温を歓迎しない。
「で、どこに行くんだ」「言わない」「せめて服装だけでも」「普段のあなたでいい」
「普段の俺が一番まずいだろ」「だから普段のあなたでいいんだよ」
意味がわからない。幼馴染という生物は、たまに哲学者みたいなことを言う。哲学者ほど責任を取らないのに。
洗面所で顔を洗う。鏡の中の俺は、俺より先に諦めている顔をしていた。歯を磨く。口の中から“昨日”が出てこないかと思ったが、出てくるのはミント味の空虚だけだ。部屋に戻ると、彼女が俺の机の上を勝手に片付けていた。勝手に。とても勝手に。
「やめろ、そこは俺の混沌だ」「混沌って言えば許されると思うな。これ、レシートの山」「それも混沌」「ただの忘却」きつい。だが正しい。正しいことはいつもきつい。
着替える。上着を羽織る。財布と鍵を探す。鍵は玄関の靴箱の上に置かれていた。俺が置いた覚えはない。
「置いたの、私」「勝手に?」「勝手に。あなた、昨日鍵落としかけたから」「昨日って何だよ、昨日、昨日……」
昨日が世界の合言葉になっている。俺の知らない世界が、俺の生活を決めていく。玄関に立つ。靴を履く。俺の靴紐は片方だけ妙に短い。そういう小さな不備が人生の象徴みたいで腹が立つ。ドアノブに手をかけた瞬間、彼女が俺の背中に言葉を投げた。
「ねえ。怖い?」俺は答えなかった。怖いのは外じゃない。外に出たあと、何も変わらないことだ。外に出たのに、俺が俺のままであることだ。「……怖いよ」「そっか」彼女はそれ以上、慰めない。慰めのない肯定は、妙に重い。
ドアを開ける。冷たい空気が顔にぶつかる。朝は暴力だ。だけど、暴力にも種類がある。これは、まだ生きている者への暴力だ。玄関を出る。鍵を閉める音が、やけに大きい。戻れない音だ。隣で彼女が歩き出す。迷いがない。迷いがない人間ほど、危険だ。
「どこへ行くんだ」「言わないって」「じゃあ、せめて、なんで俺を連れてく」「あなたが昨日、そう書いたから」「契約書に?」「ううん。もう一枚」
彼女はポケットから、小さな紙を出した。メモの切れ端みたいなやつ。そこに、俺の字で、たった一行。
『玄関を出たら、世界のほうから会いに来る』
俺はその文字を見て、笑いそうになって、笑えなかった。俺はいつから、そんな大それた妄想を信じる人間になった? 彼女はメモを折ってしまい、何事もないように歩き続けた。角を曲がる。朝日が眩しい。前方の横断歩道の向こうに、見覚えのない車が止まっている。黒い。窓が濃い。こちらを待っているみたいに静かだ。彼女は立ち止まらずに言った。「ほらね。来た」俺は、自分が今どこへ連れて行かれるのか、まだ知らない。だけど足だけは、勝手に前へ出ていた。